✅ SGRTがあっても固定具が必要な理由

① SGRTは「位置の確認」がメインで、姿勢を保つ力はない
SGRTは「患者の体表面を3Dカメラでリアルタイムにモニタリングするシステム」です。
例えば、呼吸や体のズレを追跡して「今、位置がずれていますよ」と教えてくれるのがSGRTです。
しかし、患者さんの体を物理的に支えてズレを防ぐ**「支える機能」や「形を固定する力」はSGRT自体にはありません**。
つまり:
- SGRT = 「ずれたら教えるカメラ」
- 固定具 = 「ずれないように支える道具」
という関係です。
SGRTが「ずれましたよ!」と教えてくれても、固定具がなければその都度治療を止めて位置を直す必要が出てしまいます。
だからこそ、「位置を維持する」役割として固定具は必須なのです。
② 「体表面の位置が安定しやすい環境」を作るために固定具が必要
SGRTは体表面の位置を高精度で追跡できますが、そもそも患者さんが「安定した姿勢」を取っていないと、追跡そのものが難しくなります。
特に:
- 頭頸部がん → マスクで頭部をしっかり固定しないと、ほんの数ミリのずれが致命的
- 肺がん・乳がん → 呼吸による体の揺れを最小限にするための「体幹サポート」が必要
SGRTが効果を発揮するには、患者さんの体が安定した状態で「ずれにくい環境」にあることが前提です。
この「安定した環境」を作るのが固定具の役割です。
③ 長時間の治療中の「無意識のずれ」を防ぐため
放射線治療は数分〜十数分かかることがあり、その間、患者さんは完全に動かずにいなければなりません。
でも、人間は無意識のうちに体が動いてしまうものです(微小な筋肉の動きや重力による姿勢の変化など)。
これを**「無意識のズレ」**と呼びます。
SGRTは「動いたら教えてくれる」ものの、患者さん自身が長時間ピクリとも動かずにいるのは難しいため、固定具が必要になります。
✅ まとめ
SGRTの役割 | 固定具(マスクなど)の役割 |
---|---|
動きを検知する | 動きを防ぐ・支える |
リアルタイムの位置確認 | 姿勢の保持・安定化 |
位置ずれの警告 | 物理的な制御 |
SGRTだけでは「姿勢を保持する力」が足りないため、固定具が必要なのです。
つまり、SGRTと固定具は補完し合う存在であり、どちらか一方だけでは治療の高精度化は実現できません。
📝 おまけ:SGRTと固定具を組み合わせた最新トレンド
最近の放射線治療現場では、SGRTを補助的な位置確認ツールとして使いながら、固定具でしっかり位置を保持する「ダブルガード」の考え方が主流になっています。
固定具があってこそ、SGRTの「ズレを検知する力」が最大限に発揮されるのです。
このような多層的な安全対策こそが、最新の放射線治療の質を高めるカギになっています。