再照射にSBRTは有効か?―JROSG 19-1 RESCORE試験の結果から

放射線治療の領域において、「再照射」は常に高い技術と判断力を求められる課題の一つです。特に、脊椎転移の再照射は、QOLに直結する疼痛緩和と同時に、脊髄損傷などのリスクマネジメントを伴う高度な照射技術を必要とします。
2025年2月に発表されたJROSG 19-1 RESCORE試験(Japanese Radiation Oncology Study Group)は、この再照射という難題に対して、定位体幹部放射線治療(SBRT)と従来の単回8Gy照射のランダム化第3相比較試験を実施。その結果が、**Japanese Journal of Clinical Oncology(JJCO)**に掲載されました。
今回は、この論文の要点と放射線治療の現場への示唆をわかりやすくまとめます。
🧪 研究背景と目的
● 脊椎骨転移による疼痛は、放射線治療のなかでも最もよくある緩和適応。
● 初回照射で疼痛緩和が得られても、数か月〜1年後に再燃するケースが多い。
● しかし、再照射では脊髄への線量制約や有害事象のリスクから、標準治療が定まっていなかった。
☑️ この試験は、「再照射において高精度なSBRTと、単回の8Gy照射とで、疼痛緩和効果に差があるか」を明らかにする目的で設計されました。
👥 試験デザイン
- 対象:脊椎骨転移に対し、以前に放射線治療歴があり、再度疼痛を認めた患者
- 登録数:155人
- 割付:
- SBRT群:24 Gy / 2回(12 Gy×2)
- 単回照射群:8 Gy / 1回
- 主要評価項目:治療後12週時点の完全疼痛緩和率
📊 主な結果
🔵 疼痛緩和率(主要評価項目)
- SBRT群の方が有意に高い疼痛緩和率を示した(p < 0.05)
- 完全緩和に加え、部分緩和・再照射回避率もSBRT群が良好
🔵 有害事象
- グレード3以上の有害事象の頻度は両群で大きな差はなく、SBRT群も良好な忍容性を示した。
🔵 二次評価項目としてのQOLスコア
- 疼痛スコアの改善、ADL維持率においてもSBRT群がやや優位
🔍 臨床的インパクト
本試験の結果は、再照射におけるSBRTの有効性と安全性を支持するエビデンスとして極めて重要です。特に以下の点が現場での活用に役立ちます。
✅ 1. SBRTが「非劣性」ではなく「優越性」を証明
従来、再照射には慎重論が多く、単回照射で済ませるケースが大半でしたが、本研究ではSBRTが疼痛緩和の点で明確に優れていたことが示されました。
✅ 2. 脊髄近傍の再照射にも適応可能
適切な計画とQA管理を行えば、脊髄線量制約を守りながら高線量再照射が可能であることが示されました。これは医学物理士・放射線技師の計画・QA能力の重要性を示すものです。
✅ 3. 緩和照射にも“精密医療”の視点
かつては「緩和だから一律8Gy」とされていた脊椎転移照射。しかし、QOL向上と長期疼痛制御の観点から、より精緻な照射設計が求められる時代に入ってきました。
🧭 今後の課題と期待
- 保険適応の明確化
- 現在、再照射のSBRTには明確な償還ルールが存在しないことが多く、今後は保険制度上の整備が急務です。
- 全国レベルでの計画水準の平準化
- SBRTを安全に実施するには、明確なQAプロトコル・線量制限の教育が重要。
- 各施設の技師・物理士の技量格差是正のための取り組みも必要です。
- AI計画や自動輪郭描出との融合
- 精度と効率を両立する技術革新が、再照射のハードルをさらに下げる可能性があります。
✨ まとめ
今回のRESCORE試験は、放射線治療の中でも特に判断が難しい「再照射」において、SBRTという選択肢が有効かつ安全であることを明確に示した貴重な臨床研究です。
- 疼痛緩和率の高さ
- 再照射の安全性
- 緩和照射の質の向上
を同時に満たす本手法は、今後の放射線腫瘍学の方向性を象徴する結果とも言えるでしょう。
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