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医学物理士が目指すジャーナル

医学物理士が知っておくべき主要ジャーナルの特徴

~Medical Physics, JACMP, IJROBP, Radiotherapy and Oncologyの違い~

放射線治療の分野で活躍する医学物理士にとって、日々進歩する技術や知見をキャッチアップすることは非常に重要です。そのためには、専門の学術雑誌(ジャーナル)を定期的に読み、必要に応じて自ら研究成果を投稿することが求められます。なかでも注目すべき主要ジャーナルとして、「Medical Physics」「Journal of Applied Clinical Medical Physics(JACMP)」「International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics(IJROBP, 通称Red Journal)」「Radiotherapy and Oncology(Green Journal)」の4誌が挙げられます。

本稿では、それぞれのジャーナルの特徴と、新米医学物理士の皆さまがどのように関わるべきかについて、分かりやすく解説いたします。


1. Medical Physics

発行元: American Association of Physicists in Medicine(AAPM)
インパクトファクター(2023年): 約4.0前後

「Medical Physics」は、放射線治療や画像診断に関する理論的および技術的研究を取り上げるジャーナルです。Monte Carlo法による線量計算、新しい画像再構成アルゴリズム、線質測定法、機器の校正手法など、物理的・数理的アプローチを用いた基礎研究が多く掲載されています。

理論性の高い研究が中心であるため、大学院生や研究志向の強い医学物理士にとっては非常に学びが深い内容です。ただし、臨床での即時活用よりも、原理の理解や将来の技術応用に役立つ知識を得るためのジャーナルといえます。


2. Journal of Applied Clinical Medical Physics(JACMP)

発行元: AAPM
インパクトファクター(2023年): 約2.5前後

「JACMP」は、臨床応用に特化した医学物理ジャーナルです。実際の治療現場における技術的工夫、装置の性能評価、品質保証(QA)手順の改善、新規プロトコルの導入といった、実践的かつ応用性の高い内容が多く掲載されています。

特に新米医学物理士にとっては、臨床現場で直面する課題に対する具体的な解決策や工夫を学ぶことができ、即戦力となる知識を得るには最適なジャーナルです。また、比較的投稿しやすく、初めての論文執筆先としてもおすすめです。


3. International Journal of Radiation Oncology, Biology, Physics(IJROBP, Red Journal)

発行元: American Society for Radiation Oncology(ASTRO)
インパクトファクター(2023年): 約6.0前後

「Red Journal」は、放射線腫瘍学における最も権威あるジャーナルのひとつであり、物理学だけでなく、生物学や臨床分野までを広く扱っています。物理領域においては、治療精度の向上が患者予後にどのように寄与するかといった、臨床との関連性が高い研究が求められます。

掲載される論文は非常にハイレベルで、特に臨床的インパクトの高い内容が重視されます。そのため、投稿のハードルは高いものの、医師や他職種との連携による臨床研究の成果をまとめた際には、挑戦する価値のあるジャーナルです。


4. Radiotherapy and Oncology(Green Journal)

発行元: European Society for Radiotherapy and Oncology(ESTRO)
インパクトファクター(2023年): 約5.5前後

「Green Journal」は、ヨーロッパを中心とした放射線治療分野のトップジャーナルです。Red Journalと同様に、生物・臨床・物理の3領域をカバーしています。特に医学物理に関しては、画像誘導放射線治療(IGRT)や自動化、AIの活用、ガイドライン準拠のQA手法などが多く取り上げられています。

多施設共同研究や国際的な視点を持つ研究が多く、実臨床への実装可能性が重視されている点が特徴です。ESTROメンバーや欧州圏でのネットワークを持つ研究者との共同研究であれば、より採択率が高まります。


新米医学物理士の皆さまへのアドバイス

● 読むべきジャーナル:

まずは、JACMPを定期的に読むことをおすすめします。現場の工夫や注意点を把握することで、日々の業務にすぐに活かすことができます。また、Medical Physicsも並行して読むことで、物理理論や新技術の基盤を理解し、自身の知識の幅を広げることができます。

● 投稿を目指す際には:

  • JACMP:臨床導入の工夫や技術報告であれば、比較的投稿しやすく、初投稿に適しています。
  • Medical Physics:理論的貢献のある研究、新しいアルゴリズムや手法の提案などが求められます。
  • Red Journal / Green Journal:臨床的インパクトが大きい研究、多施設データや国際共同研究に基づく論文での投稿が推奨されます。

おわりに

医学物理士としてのキャリアにおいて、優れたジャーナルを読み解く力、そしていずれは研究成果を発信する力は、大きな武器となります。各ジャーナルの特徴を理解したうえで、自分の興味や研究テーマに合ったものを選び、知識を深めていくことが大切です。

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