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放射線治療のQA&QCはなぜこれほど厳密?診断技師には見えない“もうひとつの戦場”

病院内で同じ「放射線技師」として働いていても、放射線診断技師と放射線治療技師では求められる責任・ストレス・仕事の中身はまったく違うことがあります。

「今日も胸写100枚」「CT検査が遅れて怒られた」――そんな診断技師の悩みを横目に、治療部門ではこんな声が漏れます。

「今日もQAが1時間半」「光軸ズレてる!? これ本当に照射してたら事故レベルだぞ…」

今回は、放射線治療におけるQA(Quality Assurance)とQC(Quality Control)の重要性、そしてその裏にある治療技師や医学物理士たちの苦労と緊張感を掘り下げてご紹介します。


1. 🎯 QA&QCがここまで厳密な理由

放射線治療は「1mmのずれ」が命取り

放射線治療の最大の特徴は、高線量をミリ単位の精度で腫瘍に集中させるという点です。
誤差が1cmでもずれれば、正常組織に重篤な障害を与え、がんには届かない可能性もあります。

  • IMRT、SBRT、IGRTなどの高精度治療では、サブミリ単位の位置精度と線量精度が要求されます。
  • QCが不完全なまま治療が実施されれば、**「患者に有害な線量を照射した」=医療過誤(ヒヤリどころではない)**につながる可能性があります。

2. 🛠 QA&QCの現実的な作業量

「毎朝QAで機器を確認してからでないと治療に入れない」
これは治療技師にとって当たり前の日課です。

✅ 代表的なQA項目(一部抜粋)

頻度項目例
毎日光軸・レーザー・出力安定性チェック、IGRTシステム起動確認
毎週フラットネス・シンメトリー、MLCの動作検証
毎月線量キャリブレーション、ビームプロファイル検証
年1回総合的機能確認、治療計画との照合試験など

💡 これらすべてを**“ミスゼロ”で実施・記録・管理**しなければならないのが、放射線治療部門のプレッシャーです。


3. 👨‍🔬 医学物理士という“縁の下の頭脳”

放射線治療の品質保証において、医学物理士の存在は絶対不可欠です。

  • 線量計算の基礎設計
  • ビーム校正や治療計画装置の精度管理
  • 治療計画のレビューと承認
  • 治療機器全体のリスク管理とトラブル対応

彼らの仕事は患者の目にも診断医の目にも触れないことが多いですが、ミスがあれば直ちに治療全体に支障をきたす領域です。

しかも、日本で医学物理士になるには:

  • 医学物理専門修士課程(JAMP認定)を修了
  • 臨床実習・学会発表・筆記試験を通過
    という長くて険しいハードルが待っています。

4. 🆚 放射線診断技師との違い

項目放射線診断技師放射線治療技師
主な役割撮影(CT、MRIなど)照射準備・QA・治療実施
ミスの影響画像の再撮影治療事故・患者への実害
QAの頻度装置点検(少なめ)毎日必須、項目多数
精度要求数mm単位サブmm〜mm単位
ストレスの種類ワークフローの忙しさ精密性と責任の重さ

5. 🔒 QA&QCを怠るとどうなるか

過去には海外を中心に、線量設定ミスやビーム誤照射による患者死亡事故も報告されています(例:米国での治療計画ミスによる過照射事故)。

治療技師・医学物理士は、これらを**二度と繰り返さないための“最後の砦”**として働いています。


📝 まとめ:だからこそ、誇れる仕事

放射線治療の世界は、

  • 目立たない
  • 地味
  • 重圧が大きい

そんな現場かもしれません。
しかし、1人1人の命に真正面から関わる重みと誇りがある仕事です。

放射線治療部門にいる技師や物理士たちは、「当たり前に正確な治療が行われている」という信頼の裏側で、毎日闘っています


✍ おわりに

もしあなたが診断部門の放射線技師で、「治療ってなんか大変そうだな…」と思っているなら、それはきっと正しい感覚です。
でも、その大変さの中にある奥深さとやりがいを一度覗いてみてください。

そして、「もっと専門的に関わりたい」と思ったら、ぜひ医学物理士への道も考えてみてください。
その道の先には、患者の“見えない命綱”を支えるプロフェッショナルの世界が広がっています。

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