放射線治療医と医学物理士:日米比較!

アメリカで「放射線腫瘍医」になるのはなぜこんなに難しいのか?
アメリカで放射線腫瘍医(Radiation Oncologist)として専門医資格を取得するのは、非常に狭き門です。そもそも放射線腫瘍学は、米国内でも高度に専門的な分野とされており、研修ポジションの数も限られています。その難しさには、主に以下の3つの理由が挙げられます。
① 大学の成績は上位3分の1以上が常識
アメリカでは、医学部卒業後にマッチング制度(NRMP)を経てレジデンシーに進みますが、放射線腫瘍科は極めて人気が高く、マッチングを勝ち抜くには学業成績がトップクラスである必要があります。多くの合格者はクラスの上位3分の1、場合によっては上位10%以内です。
② 米国医師国家試験(USMLE)で高得点が必須
USMLE Step1やStep2で高得点(240~260以上)を取得していることがほぼ前提です。多くのプログラムではスコアをふるいにかけて応募者を絞っており、スコアが足りないと面接すら呼ばれないケースも珍しくありません。
③ 年収水準の高さも影響
米国での放射線腫瘍医の年収は、脳神経外科に次いで高いと言われています。Medscapeによると、2023年時点で平均年収は約$547,000(約8,500万円)。これだけの収入が得られる分、競争率も非常に高くなっています。
一方、医学物理士という道はどうだろうか?
放射線治療の現場において、もうひとつ非常に重要な職種が「医学物理士(Medical Physicist)」です。特にアメリカでは、日本と比較して圧倒的に待遇が良く、専門性が高く評価されています。
① 米国では医師と並ぶ重要職種
医学物理士は放射線治療計画の安全性・精度を担保する存在として、放射線腫瘍医と密接に連携して働きます。IMRT、IGRT、SRS、SBRTなどの複雑な治療計画は、彼らの知識と技術に支えられています。
② 米国では国家資格と大学院修了が前提
アメリカで医学物理士として認定されるには、CAMPEP認定の修士課程または博士課程を修了し、その後に認定試験(ABRなど)を受けて合格する必要があります。つまり、教育レベルも実務レベルも非常に高く設定されています。
③ 平均年収は$150,000以上
2023年時点での米国医学物理士の平均年収は$150,000〜$180,000(約2,300〜2,800万円)程度とされ、日本の物理士と比べて非常に高待遇です。フルタイムのポジションに加えて、非常勤やリモート対応も可能な点が人気を集めています。
アメリカでは「放射線治療」ががん治療の中核
そもそも、アメリカでは「手術・薬物療法・放射線治療」のうち、放射線治療ががん治療の主軸であるという考えが強く、患者の6割以上が放射線治療を受けています。これは日本と比べても大きな差異であり、医療リソースや人材の配置にも反映されています。
このように、放射線治療ががん治療の中で中心的な役割を果たしているという認識があるからこそ、放射線腫瘍医も医学物理士も高く評価され、それが報酬や社会的ステータスにも直結しているのです。
まとめ:日本人が挑戦する価値はあるのか?
アメリカで放射線腫瘍医・医学物理士としてキャリアを築くのは、確かに非常に難易度が高いです。しかし、努力次第で到達可能であり、日本の医療現場とは異なる高収入・高評価・専門性重視のキャリアパスが開けます。
放射線医療に関わる日本の若い医師・物理士志望者には、ぜひ一度、アメリカの制度と報酬構造を調べ、自分の将来の選択肢として考えてみてほしいと思います。
がん治療の未来は、グローバルに開かれているのです。