放射線治療機器、誰が選ぶべき?医師?技師?それとも価格重視の事務?〜導入失敗しないための実情と対策〜

放射線治療に欠かせない「リニアック(LINAC)」などの高額医療機器。
1台あたり数億円にも及ぶこの買い物、果たして誰が決めるのが正解なのでしょうか?
- 放射線治療医:「うちの症例ならこの機能は外せない」
- 医学物理士/技師:「メンテナンス性や操作性、QA対応は大丈夫か?」
- 医事課:「で、いくら?稼働率は?ペイできるの?」
…まさに「三すくみ」状態です。
本記事では、現場で実際に起きている機器導入のリアルな実例と、日本に多い導入パターン、失敗を避けるための視点を紹介します。
1. 🎯 リニアック導入は“人生の買い物”
リニアックや高精度治療機器(IMRT、VMAT、SBRT対応装置など)は、本体だけで3〜6億円以上。
さらに、
- 設置・シールド工事:数千万〜1億円
- 年間保守費用:1000万円以上
- QA用機器や関連ソフト:数百万円単位
- 稼働人件費+教育研修費:継続的に必要
つまり「買ったら終わり」ではなく、買った後が本番の機器です。
2. 🧑⚕️ 誰が“主導”で選ぶべきか?
⬛ 放射線治療医
- ✅ 利点:治療手技・臨床的妥当性の判断ができる
- ❌ 欠点:機械のスペックやQA要求には不慣れなことも
⬛ 放射線治療技師/医学物理士
- ✅ 利点:機械の操作性・安全性・日常的QAの可否を見抜ける
- ❌ 欠点:最新装置の「将来性」や病院全体の収益性判断は難しい
⬛ 医事課/経営層
- ✅ 利点:病院経営的な採算ラインを管理できる
- ❌ 欠点:現場のニーズを見落として「安い機械」一択になる危険あり
3. 🗾 日本で多い導入パターンは?
多くの中小病院・公立病院で取られているのは…
▶ 「事務主導 × カタログ価格比較型」
- 「A社のリニアックは6億、B社は5億。じゃあB社でいいよね?」
- 「新機能?うちは年配患者が多いからシンプルなやつで十分」
- 「稼働率が落ちるのが嫌だから、メンテナンスが少ない機種に」
💥結果として、
- 高精度治療への対応力が低い
- 医学物理士が確保できず外注頼み
- 治療医がモチベーションを失う…
という「じわじわ効く導入失敗」に陥ることも。
4. 📊 院内の患者背景や体制によって最適機器は変わる!
🏥 1台体制の施設の場合
- IMRT/VMAT対応機能は必須(汎用性が必要)
- 故障時の代替治療先確保が必要
- QA・保守の簡易性がより重要
🏥 2台以上体制の施設
- 1台は汎用型、もう1台はSBRT専用やMRI-LINACなど高精度型を導入可能
- 特定がん種(肺・前立腺・食道など)への特化が可能
- 院内専門職(医学物理士など)の育成も並行しやすい
5. 🎯 導入失敗を避けるための3ステップ
✅ ステップ1:臨床データ分析
- 過去3年分の治療患者数、部位、処方線量、実施手技を洗い出す
✅ ステップ2:将来計画との整合性
- がん診療連携拠点病院化や、高齢化地域ニーズに合っているか?
✅ ステップ3:医師・技師・物理士・事務の合同評価会議
- 機能性・費用・QA対応・導入後教育の各観点から総合評価
✅ まとめ
- 放射線治療機器の選定は、「価格」だけでは決められない
- 日本では事務主導が多く、臨床・物理・安全性が置き去りになることも
- 最も重要なのは、「院内の体制・患者層・今後の方向性に合った機器を、複数職種で協議して選ぶこと」
そして、「買って終わり」ではなく、「買った後に活かせる体制」が整っているかどうかが最も重要です。


