早期肛門がん(T1–2, N0–NxM0)に対する第Ⅱ相PLATO‑ACT4試験

肛門がんの放射線治療が変わる?〜Lancet Oncology
今回は2025年5月に世界的医学誌『The Lancet Oncology』に掲載された最新の臨床試験をご紹介します。
テーマは「早期肛門がんに対する放射線治療の線量を減らす試み」。治療の効果はそのままに、副作用を軽減できる可能性が示されました。
■ 肛門がんとその治療について
肛門がんは比較的稀な疾患ですが、ヒトパピローマウイルス(HPV)との関係が知られています。早期のステージ(T1~T2・リンパ節転移なし)では、放射線と抗がん剤の併用(化学放射線療法:CRT)が標準治療です。
■ 標準治療の課題
従来の治療では 50.4Gy/28分割の放射線照射が行われますが、副作用が強く、途中で治療を中断する患者さんも少なくありません。
■ 今回の臨床試験の内容(PLATO‑ACT4試験)
イギリスを中心に実施された第Ⅱ相ランダム化比較試験で、線量を減らしたrd-IMRT(41.4Gy/23分割)と従来のsd-IMRTを比較。
- 対象:早期肛門がん(T1–2、N0–Nx、M0)160名
- 比較:rd-IMRT群(105名) vs sd-IMRT群(55名)
- 併用薬:マイトマイシン+カペシタビン
- 主要評価:6ヶ月時の完全奏効率(CR率)
■ 主な結果
- CR率:rd群92%、sd群87%
- 治療中断率:rd群15%、sd群26%
- Grade 3以上の副作用:
- 放射線皮膚炎:rd群10%、sd群13%
- 下痢:rd群9%、sd群7%
「rd-IMRTは早期肛門がんにおいて、従来治療と同等の効果を持ち、副作用の軽減が期待できる」 — Alexandra Gilbert ら(筆頭著者コメント)
■ 今後への期待と課題
放射線治療の「個別最適化」が現実に近づいてきたとも言えます。
ただし、この試験は第Ⅱ相であり、局所再発率や生存率といった長期成績は今後の報告を待つ必要があります。また、非劣性の確証には第Ⅲ相試験が必要です。
■ まとめ
- 低線量でも高い治療効果(CR率92%)が得られる可能性
- 治療中断や重篤な副作用が少ない
- 今後の研究によって「負担の少ない放射線治療」が実現する可能性大
がん治療は常に進化しています。医療従事者だけでなく、患者さんも最新の治療動向を知っておくことはとても大切です。
■ 論文情報
- タイトル:Standard versus reduced-dose chemoradiotherapy in anal cancer (PLATO‑ACT4)
- 雑誌:The Lancet Oncology(2025年5月2日掲載)
- 試験登録番号:NCT03598790
https://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(25)00213-X/fulltext