胃がんの止血照射は本当に効くのか? 放射線治療医も知らない最新エビデンス

胃がんに対する止血照射
実はかなり効きます。放射線治療医でも知らない最新動向を一挙公開
放射線治療と聞くと、
多くの人は
- 根治治療
- IMRT
- SBRT
- SRS
を思い浮かべる。
しかし実は、
緩和医療の世界で非常に有効な放射線治療がある。
それが
胃がんに対する止血照射
である。
実際、
私自身も研究を続けているテーマであり、
2024年には過去の報告をまとめたレビュー論文を発表した。
胃がん出血は想像以上に多い
進行胃がんでは、
- 吐血
- 下血
- 貧血
- 輸血依存
が問題となる。
特に高齢者や切除不能症例では深刻である。
内視鏡止血が困難な場合も少なくない。
そのとき選択肢になるのが、
放射線治療である。
「放射線で止血できるの?」
よく聞かれる。
答えは、
かなり高率に止まる。
である。
2024年のレビューでは、
2007年以降の20研究(後ろ向き17件、前向き3件)を解析した。
その結果、
止血効果はおよそ80%
と報告された。
放射線治療医でも知らない事実
実は胃がん止血照射には、
前向き試験が存在する。
これは意外と知られていない。
レビューでまとめられた前向き試験は、
- Teyら
- Saitoら(JROSG17-3)
- Tanakaら
の3試験である。
JROSG17-3試験
日本放射線腫瘍研究グループによる前向き研究。
8Gy単回照射、
20Gy/5回、
30Gy/10回
などが使用された。
重要な結果は、
高線量だから止血率が高いわけではなかった
という点である。
私たちの研究
Br J Radiolで報告した研究では、
20Gy/5回を基本とした。
結果は、
初回照射の止血率80%。
さらに、
再出血した患者に対して
15Gy/5回の再照射を実施したところ、
再照射例の全例で再止血が得られた。
実は「再照射」ができる
これも知られていない。
骨転移照射では再照射が一般的。
しかし胃がんでも可能である。
生存期間が限られている場合、
症状緩和を優先することが重要になる。
理論と臨床は違うのである。
何Gyがベストなのか?
実はまだ結論が出ていない。
過去の研究では、
- 8Gy×1回
- 20Gy/5回
- 30Gy/10回
- 36Gy/12回
など様々な方法が報告されている。
しかしレビューでは、
20Gy/5回と30Gy/10回が最も現実的な選択肢
と結論づけられている。
なぜ今注目されているのか
理由は高齢化である。
近年、
- 90歳以上
- PS不良
- 多発転移
の患者が増えている。
こうした患者では、
外科手術は難しい。
化学療法も困難。
しかし出血は止めたい。
そこで放射線治療の価値が上がる。
輸血回数を減らせる
止血照射のメリットは、
単に出血を止めることではない。
- 輸血回数減少
- 入院期間短縮
- 在宅復帰
- QOL改善
につながる。
緩和照射の本質はここにある。
腫瘍を治すことではない。
患者の生活を守ることなのである。
AI時代でも価値が高い領域
最近は、
- AI contouring
- Adaptive RT
- Biology-guided RT
が話題である。
しかし胃がん止血照射のような緩和治療も重要である。
なぜなら、
患者利益が非常に大きいから。
ASTROやESTROでも、
緩和放射線治療の重要性は再評価されている。
今後の研究課題
最大の課題は、
8Gy単回照射で十分か?
である。
レビューでも、
短期間で治療を終えることの重要性が指摘されている。
高齢患者や遠方患者では、
10回通院より1回照射の方が望ましい場合もある。
今後は、
8Gy×1回
vs
20Gy/5回
vs
30Gy/10回
の比較試験が期待される。
まとめ
胃がんに対する止血照射は、
放射線治療医の中でも意外と知られていない。
しかし現在のエビデンスでは、
- 止血率約80%
- 輸血減少
- QOL改善
- 再照射も可能
という非常に有用な治療である。
特に、
20Gy/5回
30Gy/10回
は実臨床で使いやすい。
高精度ではなく患者利益。
装置ではなく戦略。
そして緩和医療の現場では、
この考え方こそ最も重要なのである。
参考文献
- Osamu Tanaka. Hemostatic palliative radiotherapy for gastric cancer: A literature review. Technical Innovations & Patient Support in Radiation Oncology, 2024.
- Tanaka O, et al. Br J Radiol. 2020.
- Saito T, et al. Gastric Cancer. 2022.
- Tey J, et al. Cancer Medicine. 2019.
- JROSG 17-3 Study.


