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膵臓がんでSBRTはどこまで有効なのか?世界のエビデンスから考える

膵臓がん最前線

局所進行膵癌の治療、さてどうする?

膵臓がんは現在でも最も治療が難しいがんの一つです。

5年生存率は徐々に改善しているものの、肺がんや乳がん、大腸がんのような劇的な進歩はまだ見られていません。

しかし、この10年間で局所進行膵癌(Locally Advanced Pancreatic Cancer:LAPC)の治療は確実に変わりました。

かつては

「切除できなければ化学療法しかない」

と考えられていました。

現在では

  • 強力な化学療法
  • Conversion Surgery
  • SBRT
  • IMRT
  • MR-guided Radiotherapy
  • Adaptive Radiotherapy

など、多くの選択肢があります。

一方で、

どれを選択するか

は非常に難しい問題です。

理論と臨床は違います。

装置ではなく戦略。

今回は放射線治療医の視点から局所進行膵癌を考えます。


まず膵癌を分類する

膵癌は大きく

・切除可能(Resectable)

・境界切除可能(Borderline Resectable)

・局所進行(Locally Advanced)

・遠隔転移

の4つに分類されます。

局所進行膵癌とは、

遠隔転移はないものの、

腹腔動脈

上腸間膜動脈(SMA)

門脈

などへの浸潤により手術が困難な状態です。

しかし、

「手術できない=治らない」

ではなくなりました。


第一選択は化学療法

現在の標準治療は

FOLFIRINOX

または

Gemcitabine+nab-Paclitaxel

です。

昔のGemcitabine単独療法とは全く異なり、

局所制御だけでなく、

腫瘍縮小

微小転移制御

Conversion Surgery

まで期待できます。

つまり

まず全身治療。

これが現在の世界標準です。


手術できるなら手術が第一選択

ここは今も変わりません。

R0切除が可能なら

やはり手術が最も根治性が高い治療です。

しかし問題は、

手術できそうでできない

Borderline

Locally Advanced

です。

ここで放射線治療が登場します。


放射線治療の役割は何か?

以前は

50.4Gy/28回

54Gy/30回

などの通常分割照射が中心でした。

しかし、

局所制御は改善しても

生存期間への影響は限定的でした。

このため

一時期

「膵癌に放射線はいらない」

という考え方もありました。

しかし現在は違います。


SBRTという選択肢

近年最も注目されているのが

SBRTです。

5回前後

BED100Gy以上

短期間終了

高い局所制御

が特徴です。

最大のメリットは

全身治療を中断しなくて済むこと。

28回照射では

約6週間

化学療法が止まります。

しかしSBRTなら

1週間程度。

これは非常に大きい。

膵癌では

局所だけではなく

全身病です。

だから

workflowが重要になります。


しかしSBRTは簡単ではない

膵臓は

十二指腸

小腸

大腸

胆管

などに囲まれています。

さらに

呼吸で大きく動きます。

つまり

肺SBRTより難しい。

だから

SBRT成功の鍵は

装置ではありません。

Workflowです。


現場では何をしている?

海外施設では

〇呼吸停止

〇腹部圧迫

〇4DCT

〇MRI

〇CBCT

〇Adaptive

などを組み合わせています。

最近では

MRI-Linac

によるAdaptive RTも増えてきました。

毎日

十二指腸位置を修正

胃位置を修正

小腸位置を修正

してから照射します。

これが

Adaptive Radiotherapyです。


日本と海外は少し違う

欧米では

SBRTはかなり普及しています。

一方

日本では

まだIMRT中心の施設も多く、

適応も施設差があります。

また

Conversion Surgeryとの連携も

海外ほど標準化されていません。

ここは今後改善していくでしょう。


BiologyよりWorkflow

実は

膵癌SBRT成功施設を見ると

共通点があります。

装置ではありません。

Workflowです。

呼吸管理

位置合わせ

消化管確認

線量制約

Adaptive

画像確認

チーム医療

これらが

局所制御率を左右しています。


AI時代は何が変わる?

AIは

Auto Contouring

Auto Registration

Adaptive Planning

線量最適化

などで活躍しています。

しかし

膵癌ほど

AIだけでは難しい臓器はありません。

毎日変化する

小腸

十二指腸

これらを見ながら

最終判断するのは

放射線治療医です。

最後は人間。


今後の膵癌治療

今後期待されるのは

・MR-guided Adaptive RT

・PET画像を利用した治療戦略

・Radiomics

・AIによる毒性予測

・ctDNAによる治療選択

・個別化SBRT

です。

放射線治療は

局所治療から

集学的治療の一部へと進化しています。


まとめ

局所進行膵癌では、

「手術」「化学療法」「放射線治療」を対立する選択肢として考える時代ではなくなりました。現在は、化学療法で全身病変をコントロールし、局所制御にはSBRTやIMRTを適切なタイミングで組み合わせ、切除可能となればConversion Surgeryを目指すという、集学的な治療戦略が重要です。

放射線治療医に求められるのは、「SBRTを照射できること」ではありません。

どの患者に、どのタイミングで、どの線量・分割を選択し、外科・消化器内科・腫瘍内科とどう連携するか。

それこそが、患者利益につながる本当の専門性です。

装置ではなく戦略。

高精度ではなく患者利益。

workflowがすべて。

そして、AI時代になっても、複数の治療法を統合し最適な道筋を描く役割は医療者に残されます。

理論と臨床は違う。最後は人間。


参考文献

  • NCCN Clinical Practice Guidelines for Pancreatic Adenocarcinoma
  • ESMO Clinical Practice Guideline for Pancreatic Cancer
  • LAP07 Trial
  • Alliance A021501 Trial
  • SMART Trial
  • ASTRO Clinical Guideline

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