放射線治療の線量表記、日本と海外でどう違う?

60Gy/30fx? 60Gy/30fr? 正しい書き方と注意点
放射線治療に関わっていると、必ず目にする線量表記。
- 60 Gy/30 fx
- 60 Gy/30 fr
- 60 Gy in 30 fractions
- 2 Gy × 30
「結局どれが正しいの?」
「日本と海外で違うの?」
「論文ではどう書くべき?」
今回は、放射線治療の線量表記の違いと、誤解されない書き方を整理します。
結論から言うと
👉 意味はほぼ同じ。違うのは“文化”と“用途”
👉 論文では “in XX fractions” が最も安全
まず基本:線量表記の構成要素
放射線治療の線量表記は、次の3つで成り立っています。
- 総線量(Total dose):Gy
- 分割回数(Number of fractions)
- 1回線量(Dose per fraction)
例:
- 総線量:60 Gy
- 分割回数:30
- 1回線量:2 Gy
よく見る4つの書き方と意味
① 60 Gy in 30 fractions
✅ 最も国際的・論文向き
- 海外論文・ガイドラインで最も好まれる
- 曖昧さがなく、査読者に突っ込まれにくい
おすすめ度:★★★★★(論文・正式文書)
② 60 Gy / 30 fractions
- スラッシュ表記
- 意味は①と同じ
- 論文でも許容されることが多い
おすすめ度:★★★★☆
③ 60 Gy / 30 fx
- fx = fractions
- 主にアメリカの臨床現場・スライドで多用
- カルテ、プレゼンではよく見かける
おすすめ度:★★★☆☆(論文ではややラフ)
④ 60 Gy / 30 fr
- fr = fractions
- 欧州系・物理系の文書でよく使われる
- 日本でも違和感なく通じる
おすすめ度:★★★☆☆
つまり…
60Gy/30fx と 60Gy/30fr はどちらも正しい
ただし、論文では “in 30 fractions” が最も安全
海外論文で「親切」とされる表記
論文では、以下のように1回線量も明記すると好印象です。
- 60 Gy in 30 fractions (2 Gy per fraction)
- 60 Gy/30 fractions (2 Gy/fx)
👉 読者(査読者・他施設)が一瞬で理解できます。
さらに海外でよく見る表記パターン
● 期間を含める
- 60 Gy in 30 fractions over 6 weeks
- 休止や治療期間が重要な癌種では特に有用
● ブースト併記
- 45 Gy in 25 fractions + boost 15 Gy in 5 fractions
- スライドでは
45/25 + 15/5 と略されることも
● 同時統合ブースト(SIB)
IMRT・VMATでは必須の書き方。
- 70 Gy/35 fx to PTV70 and 56 Gy/35 fx to PTV56 (SIB)
👉 同じ回数で異なる線量が入るため、必ず対象(PTV)を明記。
● SBRT・寡分割
- 54 Gy in 3 fractions
- 50 Gy in 5 fractions
- 8 Gy in 1 fraction
👉 fx/fr を省略すると誤読されやすいので、論文では省かない方が安全。
注意!事故・誤解につながりやすい表記
⚠️ 「60 Gy / 2 Gy」
- 回数なのか1回線量なのか不明
- 極めて危険な省略
⚠️ 「60 Gy / 30」
- 単位が片方しかない
- 海外では特に嫌われる
⚠️ BED・EQD2の混在
- EQD2 = 66 Gy (α/β=10) のように必ず明示
- 実線量(physical dose)と同列に書かない
日本と海外の“表記文化”の違い
🇯🇵 日本
- 「60Gy/30回」
- 「2Gy×30回」
- 日本語カルテ・照射録では問題なし
🇺🇸🇪🇺 海外
- in XX fractions を強く好む
- 曖昧な省略を嫌う
- SIBや期間の明示が重要視される
おすすめの使い分け(結論)
✔ 論文・国際学会
60 Gy in 30 fractions (2 Gy per fraction)
✔ 院内資料・スライド
60 Gy/30 fx (2 Gy/fx)
✔ SIB・高精度治療
線量+回数+対象(PTV)を必ずセットで
まとめ
放射線治療の線量表記は、
- どれが正しいかより
- 誰が読むか・どこに出すか
で使い分けるのが正解です。
曖昧な表記は、
誤解・事故・査読指摘のもと
だからこそ、
「in XX fractions」を基本にする
これが世界共通で最も安全な書き方です。


