論文、書いていますか?

「どこから手を付けたらいいかわからない人」へ。最初に探すべきは“limitation”です
論文を書きたい。
でも、最初の一歩で止まる人がとても多いです。
- テーマが思いつかない
- 何を調べたら新規性になるかわからない
- すでに誰かがやっていそうで怖い
- データを集めても、どこに着地させればいいかわからない
この悩み、実はかなりシンプルに解決できます。
答えは「limitation(研究の限界)」を探すこと。
いい論文ほど、最後にちゃんと書いてあります。
「今回の研究はここが限界だった」
「次はこういう研究が必要」
つまり、次の研究のヒントが、著者自身の言葉で書かれているんです。
今回は、
“limitationから研究テーマを見つけるコツ5選” を、論文初心者でも使える形でまとめます。
1) まずは「自分の興味のある分野」を狭く決める(広すぎると迷う)
最初にやりがちなのが、テーマを広く取りすぎることです。
たとえば
- × 放射線治療全般
- × がん治療
- × 画像診断
これだと広すぎて、limitationを読んでも全部良さそうに見えてしまいます。
コツ
最初は “1疾患 × 1技術 × 1目的” まで狭めると動きやすいです。
例:
- 肺癌 × SBRT × 画像バイオマーカー
- 前立腺癌 × IMRT × 有害事象予測
- 骨転移 × 緩和照射 × 効果判定
- 頭頸部 × 固定精度 × セットアップ誤差
ここまで絞ると、読むべき論文が一気に見えてきます。
ポイント:
テーマは“広く考えて、検索は狭く始める” のが正解。
2) limitationだけ読むのではなく、「結果」とセットで読む
初心者ほど、limitationの段落だけ読んで終わってしまいがちです。
でもそれだと、次に何をやるべきかを間違えます。
なぜなら、同じ limitation でも意味が違うからです。
- 「症例数が少ない」
→ 本当に次は多施設研究が必要なのか?
→ それとも、効果量が小さすぎて症例数を増やしても厳しいのか? - 「後ろ向き研究だった」
→ 前向き研究にすればよいのか?
→ それとも評価項目そのものが曖昧なのか?
コツ
limitation → Methods → Results の順に戻る クセをつける。
見るべき点はこの3つ:
- 何を測った研究か(評価項目)
- どれくらい差が出たか(効果量)
- limitationが“本質的な弱点”なのか“形式的なお約束”なのか
ポイント:
limitationは“宝の地図”だけど、結果を読まないと地図の意味がわからない。
3) 「著者が本当に困っていた点」を拾う(建前ではなく本音)
論文の limitation には、正直2種類あります。
A. お約束のlimitation(建前)
- 単施設研究である
- 症例数が少ない
- 後ろ向きである
これはもちろん大事ですが、どの論文にも書いてあります。
B. 本音のlimitation(次の研究の種)
- この指標は再現性が悪かった
- ROI定義が施設間でばらつく
- 追跡期間が短く、晩期毒性が評価できない
- 画像取得条件が統一されていない
- 併用治療が混在して解釈が難しい
この“本音”が、次の研究テーマとして一番おいしいところです。
コツ
limitationの中で、以下の言葉が出たら要チェックです。
- standardization(標準化)
- reproducibility(再現性)
- validation(外部検証)
- prospective(前向き)
- multicenter(多施設)
- confounding(交絡)
- heterogeneity(不均一性)
ポイント:
論文テーマは「不足しているもの」より、**“著者が困ったもの”**から作ると強い。
4) limitationを“そのまま真似しない”で、1段小さくする
ここ、すごく大事です。
良い論文の limitation を読むと、ついこう思います。
「よし、次は多施設前向き試験だ!」
…でも、それを最初からやろうとして止まる人が多いです。
よくある失敗
- 研究計画が大きすぎて動けない
- 倫理申請・連携・データ設計で止まる
- 結局、半年たっても症例登録ゼロ
コツ
limitationを見つけたら、**“同じ方向で1段小さい研究”**に分解する。
例:
- 「多施設で検証が必要」
→ まずは自施設の別時期コホートで外部風検証 - 「ROIの標準化が必要」
→ まずは2人の読影者で再現性(ICC)を出す研究 - 「前向き試験が必要」
→ まずは後ろ向きで評価項目を磨く予備研究
これだけで、研究が急に“動くサイズ”になります。
ポイント:
いきなり本丸に行かない。limitationを分解して、最初の1本にする。
5) limitationメモを“研究ネタ帳”として貯める(1本読んで終わらない)
論文探しが続かない人は、読んでも記録していません。
これが一番もったいないです。
おすすめのネタ帳フォーマット(超シンプル)
- 論文タイトル
- 対象(疾患・症例数)
- 何を見た研究か(評価項目)
- 結果の要点(1行)
- limitation(原文 or 要約)
- 自分なら次に何をやるか(1行)
これを10本分作るだけで、研究テーマ候補が自然に3〜5個できます。
しかも強いのは、自分の興味の偏りが見えること。
「あ、自分は画像評価の再現性に興味があるな」
「有害事象予測の論文ばかり気になってるな」
こういう“自分の研究軸”が見えてきます。
ポイント:
研究テーマは突然降ってこない。
limitationメモの蓄積から、ある日つながって見える。
まとめ:論文の始め方は「limitationを探しに行く」が正解
論文を書きたいのに手が止まる人ほど、最初から“完璧な新規性”を探してしまいます。
でも実際は、良い研究者ほどこうやっています。
- まず先行研究を読む
- limitationを拾う
- 本音の課題を見つける
- 自分の施設でできるサイズに分解する
- 1本目を出す
つまり、論文の始め方は難しくありません。
「次に何をしたらよくなるか」は、すでに論文の中に書いてあるんです。
探すコツ5選(おさらい)
- 興味分野を「1疾患×1技術×1目的」まで絞る
- limitationは結果とセットで読む
- 著者の“本音の困りごと”を拾う
- limitationを1段小さい研究に分解する
- limitationメモを研究ネタ帳にする

