2025年6月26日
2025年に**British Medical Journal(BMJ)**系列誌に掲載された、放射線治療に関する注目論文2本 ホーム 2025年に**British Medical Journal(BMJ)**系列誌に掲載された、放射線治療に関する注目論文2本
① 放射線増感を目的とした既存薬の再活用 — BMJ Oncology
📌 論文概要
🔬 内容と知見
目的 :既承認薬の中から、放射線治療時にシナジー効果を持つ可能性がある薬剤を整理対象薬 :シスプラチン以外に、抗マラリア薬、抗糖尿病薬、eIF2α経路を標的とする分子などがリストアップ作用メカニズム :DNA損傷修復阻害 (例:PARP、DNAピウラーゼ阻害作用)酸化ストレス増強 (ヒポキシア緩和や細胞内ROS増加)臨床フェーズ :複数の第II~III相試験が計画・実施予定で、前臨床データに基づく薬剤選定戦略も紹介
🩺 臨床的示唆
低コスト・高安全性 :既存薬を活用することで、新薬開発より低コストかつ早期の臨床応用が可能多施設共同研究の重要性 :多様な腫瘍種・放射線レジメンでの検証が望まれる照射計画と併用スケジュール :薬剤のタイミング(事前投与 vs 同時投与)による増感効果の最適化が鍵
② 全身放射線照射によるリンパ球減少と予後の関連 — BMJ Oncology
📌 論文概要
🔬 内容と知見 目的 :頭頸部がんに対する根治照射後の全身線量 と**放射線誘発性リンパ球減少症(RIL)**との関係を評価方法 :患者の線量‐体積解析を行い、Integral Dose(体積あたり累積線量)を算出 → 照射後のリンパ球低下と生存予後との関連を解析結果 :高いIntegral Dose群では、照射後のリンパ球数低下が顕著 RILを発症した患者群は再発率・全死亡率いずれも悪化 (p<0.05) 統計 :多変量解析でも有意な独立予後因子として確認
🩺 臨床的示唆
照射計画の見直し :リンパ節・非腫瘍組織の積算線量を最小化するIMRT/SBRTの導入が必須モニタリング :治療中のリンパ球数減少をリアルタイムに評価し、必要に応じて照射戦略の調整や支持療法(G‐CSFなど)の検討を免疫療法併用との観点 :免疫チェックポイント阻害薬併用の場合、RILが効果を阻害する可能性があるため、線量制御とタイミング調整が重要
🧭 臨床実践への応用ポイント
論文名 キーポイント 実践への応用 増感薬再活用 創薬より早期応用可能 放射線医薬連携の治療レジメン検討を推進 RILとIntegral Dose 予後不良の独立因子に 線量制御&免疫療法併用時の戦略再構築
✅ 総括 & 次のステップ
放射線治療の効果最大化 と副作用最小化 を両立する新戦略が、BMJ系列誌でも議論の中心になっています。 特に、「既存薬の再活用 」「全身線量低減による免疫保持 」という2軸は、今後の診療と研究設計の重要テーマになります。 医療現場では、これらを踏まえて:治療計画(Dosimetry)を再検討し、 既存の臨床試験ネットワークで増感薬併用や生存予後改善効果の報告を共有し、 多施設共同研究への参加を視野に入れて進めることが望まれます。