がん診断に変革をもたらす画像診断技術:Zero-TE MRIとDual-Energy CT

がん診断を変える画像診断の進歩:Zero-TE MRIとDual-Energy CTの最前線
はじめに
近年、がん診療における画像診断は単なる「病変の発見」にとどまらず、治療方針の決定・予後予測・治療効果判定に直結する領域へと拡張している。特にMRIやCTといったモダリティは、物理的な撮像原理の進歩とAI解析の発展を背景に、飛躍的な進化を遂げている。本稿では、その中でも注目を集めるZero Echo Time(Zero-TE)MRIと**Dual-Energy CT(DECT)**について、最新の知見を整理する。
Zero-TE MRI ― CTに迫る骨描出と新たな臨床応用
従来のMRIは、軟部組織コントラストに優れる一方で、皮質骨や肺などT2緩和時間が極端に短い組織の描出は困難であった。Zero-TE MRIは、エコー時間を事実上ゼロに近づけることで、これまで信号を得られなかった組織からの情報を取得できる点が画期的である。
骨描出と放射線治療計画
Zero-TE MRIにより、頭蓋骨や脊椎などの骨構造が従来にない精度で描出可能となり、CTに匹敵する情報を非侵襲的に提供する。近年は合成CT(synthetic CT: sCT)生成アルゴリズムと組み合わせることで、放射線治療計画において「MRI単独でのシミュレーション」を実現する試みも報告されている。これにより、位置合わせエラーや追加CT撮影の被曝リスクを低減できる可能性がある。
患者快適性の向上
Zero-TEは高速かつ静音という利点もあり、従来MRIで課題となっていた騒音や動きによるアーチファクトが抑制される。小児や高齢患者など、撮像時の負担を軽減できる点も臨床導入の追い風となる。
Dual-Energy CT ― 組織特性を可視化する次世代CT
一方のDual-Energy CTは、異なるエネルギーレベルのX線を用いて撮影し、物質ごとの減弱特性を解析することで、従来CTでは得られなかった情報を引き出す技術である。腫瘍診断から治療戦略立案まで、多様な応用が広がっている。
腫瘍検出と質的診断
DECTでは、ヨードマップや仮想単一エネルギー画像(VMI)を用いることで、腫瘍の血流特性や代謝特性を可視化できる。これにより、腹膜播種や小病変の検出能が向上するほか、造影効果の微細な差異を解析することで、腫瘍と炎症や瘢痕との鑑別精度も高まる。
頭頸部がんにおける軟骨浸潤評価
喉頭・下咽頭がんにおける甲状軟骨浸潤の評価では、DECTの特異度が従来CTを大きく上回るとの報告がある。これにより、過大評価による不要な喉頭摘出を回避し、機能温存を重視した治療戦略が立てやすくなる。
治療負担の軽減
さらに、仮想非造影画像(VNC)の活用により、造影剤使用量を低減しながら診断精度を維持できることが示されている。腎機能低下患者や高齢患者にとって、安全性の観点からも大きな意義がある。
画像診断とAIの融合
Zero-TE MRIとDECTはいずれも、AIとの親和性が高い。両者から得られる膨大なマルチパラメトリックデータを、ラジオミクスや機械学習で解析することで、腫瘍の分子生物学的特性や治療反応性を予測する試みが活発化している。特にDECTベースのラジオミクスは、頭頸部がんや肺がん領域で、予後予測や治療効果判定に寄与する可能性が示されつつある。
今後の展望
Zero-TE MRIは「放射線を使わないCTライクなモダリティ」として、被曝回避や治療計画の効率化に直結する。一方、Dual-Energy CTは「腫瘍の質的情報を提供するCT」として、分子診断と形態診断の架け橋となる。両者を補完的に活用することで、診断から治療までシームレスに繋がる画像医療が現実のものとなりつつある。
将来的には、マルチエネルギーCTやZero-TEベースのAI合成画像など、さらに進化したモダリティが登場し、がん診療における「precision imaging」の中核を担うことが期待される。
まとめ
- Zero-TE MRIは骨や肺といった従来描出困難な組織を明瞭に可視化し、放射線治療計画にも応用可能。
- Dual-Energy CTは腫瘍の質的情報を提供し、検出・鑑別・治療選択の精度を向上。
- 両者はAI解析との親和性も高く、診断と治療の統合的アプローチを支える技術へ進化している。
今後もこれらの技術を適切に導入し、臨床現場において「患者中心の最適化されたがん医療」を実現することが、我々医療者に求められている。


