緩和照射って何?

「がんを治すためではなく、つらい症状を和らげる」放射線治療
放射線治療と言えば「がんを治す」イメージが強いですが、**緩和照射(palliative radiotherapy)**は
がんによって生じる痛み・出血・圧迫などの症状を和らげ、QOL(生活の質)を高めること
を目的とした医療です。PMC
これは、患者さんの予後を延ばすためではなく
**“いま苦痛を減らす”**ための治療として用いられます。Radiation Oncology Targeting Cancer
緩和照射は、
- 外来で**単回(1回)**で終えられることも多い
- 負担が少なく設定できる
- 他の治療(薬物・緩和ケア)と並行可能
といった利点があります。
いつ、どんな時に使われるのか?
緩和照射は、進行がんに伴って起きる症状に対してピンポイントで使います。具体的な適応は次のようなものです:
◆ 骨転移による痛み
骨に転移したがんが痛みの原因になる場合、
放射線で病変を照射することで痛みが軽減する効果が多くの報告で示されています。PMC
骨転移はがん患者の約40〜50%が経験するとされ、緩和照射はその中でも比較的良く行われています。サイエンスダイレクト
◆ 脊髄圧迫・神経症状
転移が脊髄や神経根を圧迫している場合、進行性の麻痺や痛みを防ぐために放射線で圧迫部位の腫瘍を縮小し、機能改善や悪化予防を狙います。PMC
◆ 出血・潰瘍・圧迫症状
- 消化管腫瘍による出血
- 肺がんでの呼吸困難
- 頭頸部腫瘍の痛み・腫脹減少
など、出血や器官圧迫があるケースでも局所症状の改善が得られることが多いです。PMC
◆ その他
- 脳転移の症状緩和
- 進行した局所腫瘍による痛み・機能障害
- 出血コントロールなど多岐にわたります。PMC
緩和照射のゴールは「治癒」ではありません
緩和照射は、がんを根治(治す)するための治療ではなく、
患者さんの苦痛を軽減し、日常生活を楽にするための治療です。Cancer Research UK
そのため、
✔ 痛みを減らす
✔ 出血を止める
✔ 呼吸・嚥下を楽にする
✔ 神経症状を緩和する
✔ 侵襲の少ない治療にする
ことが主な目的になります。Oncolink
認知と紹介につながらない“現場の課題”
❗ 放射線治療医は知っているけれど…
多くの放射線治療医は日々の臨床で、
緩和照射が有効であるケースをよく見ています。
しかしながら、その情報が他診療科へ十分に伝わっていないことが大きな課題です。
例えば、
- 外科医・内科医が「症状の原因」を放射線治療で改善できることを知らない
- 訪問診療医が「在宅でも放射線治療が可能」と誤解している
- 緩和ケアチームが紹介先として放射線治療科を思い浮かべない
といった状況が起きています。日本放射線腫瘍学会
❗ 地域連携の壁
- 緩和照射の適応が分かりにくい
- 「どの科に紹介すればいいか分からない」
- 放射線治療設備がない病院ではハードルが高い
といった地域・医療機関間の連携不足が、
患者さんへの適時適切な緩和照射の提供を妨げています。日本放射線腫瘍学会
在宅ケア・訪問診療の中での緩和照射
実は、在宅や末期の患者さんでも緩和照射が使える可能性があります。
JASTROの好事例集にも、
在宅療養・訪問診療医へ緩和照射の可能性を啓蒙し、
紹介状に治療の可能性を明記し、
「積極的に単回照射を利用する」こと
を促した例が紹介されています。日本放射線腫瘍学会
具体的には、外来単回照射や当日照射を含めた短期照射が
在宅患者さんの負担を最小限にして症状緩和を実現するケースもあります。日本放射線腫瘍学会
こうした事例がもっと広く知られれば、
在宅患者さんでも日帰り緩和照射が選択肢として検討される機会が増えます。
どうすれば紹介が増えるか?
以下の点が改善のポイントです:
✔ 他科医への啓発・共有
- 放射線治療の“緩和照射の適応”を、腫瘍内科・整形外科・訪問診療医に
- 痛み・出血・圧迫などの症状に対して、放射線治療が対症療法として有効であること
→ これにより、放射線治療科への紹介が増えます。
✔ 紹介プロセスの簡便化
- どの段階で紹介すべきか
- 必要な情報・書類は何か
→ 紹介のハードルを下げる
✔ 地域医療連携
放射線治療装置がない地域医療機関でも、
- 紹介窓口やホットラインの設定
- 放射線治療医との相談体制
→ 迅速に緩和照射が提供できる仕組みを作ることが重要です。日本放射線腫瘍学会
まとめ
- 緩和照射は、痛み・出血・機能障害などを改善する放射線治療であり、
がん治療の重要な一翼を担っています。PMC - しかし、他科医・在宅医療者への認知不足が紹介不足の大きな原因です。日本放射線腫瘍学会
- 在宅療養中でも、短期・単回照射で症状緩和が可能なケースがあり、
その選択肢をもっと広める必要があります。日本放射線腫瘍学会
緩和照射が適切に届けられれば、
患者さんの痛みや苦しみの軽減につながるだけでなく、
家族や介護者の負担も大きく減ります。
ぜひ、院内・院外での紹介ルートを見直し、
「痛みの治療オプション」としての緩和照射を日常臨床に根付かせましょう。


