ASTRO 2025を終えて ―

サンフランシスコで開催された ASTRO 2025 が閉幕した。学会場を後にし、ホテルの一室で落ち着いて振り返ると、やはり「予想通り熱かったテーマ」がいくつも浮かび上がる。今年の学会は、放射線腫瘍学の未来を占うような議論に満ちていた。
1. 再照射と局所制御 ― 「安全にどこまで攻められるか」
まず最初に強調すべきは、再照射のセッションの熱気だろう。
乳がん、肺がん、前立腺がん、骨転移――かつては「再照射は最後の手段」と考えられていた領域で、いまや明確なエビデンスをもとに「局所制御を目指す再照射」が語られていた。
MRIやPETを用いた予測因子の探索、Composite EQD2による安全性評価、SBRT再照射のプロトコール比較など、議論は具体的で実践的だった。
ある演者は、「再照射はもう絶望の選択肢ではなく、緻密な線量制御を前提にした再チャレンジの道」と表現していた。この言葉は会場の空気を象徴していたと思う。
2. AIと画像解析 ― 「予測から個別化治療へ」
AIと機能画像解析の組み合わせは、当初から「ホットトピック」と予想されていた分野だが、やはりその通り、立ち見が出るほどの盛況だった。
特に注目を集めたのは、ADC値やSUVmaxの変化を用いた治療効果予測モデルである。乳がんや前立腺がんの再照射例で、治療前後のADC変化が長期局所制御の予測因子となる可能性が提示された。
さらにFDG-PETとMRIを組み合わせたハイブリッド解析は、副作用の早期予測や回復過程の可視化にまで踏み込んでいた。
まだエビデンスは途上だが、「画像で未来を読む」方向性は確実に広がっており、5年後の標準医療の姿を先取りしているように思える。
3. 骨転移とSBRT ― 緩和から根治を見据える時代へ
骨転移照射といえば「8Gy一回照射で疼痛緩和」というのが古典的な常識だった。だが今年のASTROでは、それを出発点にしつつ、2回目はSBRTで根治的局所制御を狙うアプローチが相次いで紹介された。
骨転移SBRT後にADC高値が持続することを示すデータ、そして臨床的にも疼痛再燃率が低いことを裏づける報告が印象的だった。
従来の「安全で簡便な緩和照射」と「リスクを取ってでも根治を目指すSBRT」の二本柱が、症例ごとにどう使い分けられるか――その議論は臨床現場に直結しており、多くの聴衆が熱心に耳を傾けていた。
4. 脳・脊椎SBRTとOAR制約 ― 最小ボリュームでの安全限界
脳転移や脊椎SBRTにおけるOAR制約は、ここ数年で大きな進展を見せている。今年も「thecal sac を OARとすべきか?」「Composite EQD2はどの閾値を超えると危険か?」といった実務的テーマが白熱した。
特に再照射を行う際のD0.03cc評価、EQD2累積70Gy以下といった具体的な数値は、日常診療に直結するため、会場の反応は真剣そのものだった。
5. コミュニティと連帯 ― 医学だけではない熱気
学術的な発表だけでなく、会場の雰囲気も特筆すべきだった。AIや再照射の最新データを議論する若手研究者の熱量、乳がん再照射の長期生存例を共有して目を輝かせる臨床医、そして業界ブースで議論を交わす物理士や企業人。
ASTROは単なる学会ではなく、「この領域を進めていくのは自分たちだ」という熱気を共有する場であることを改めて感じさせた。
おわりに
ASTRO 2025 を振り返って最も強く感じるのは、「当初の予想通り、再照射とAI・機能画像が最大のテーマとなり、しかも期待以上に臨床へ直結する議論が展開された」ということだ。
再照射はもはや最後の選択肢ではなく、局所制御を目指す積極的な戦略へ。
画像とAIは単なる研究ツールではなく、治療選択と副作用予測の新しい指標へ。
そして骨転移や脊椎SBRTも、緩和から根治を視野に入れる時代に入った。
これらの流れを追い風に、私たちの現場は確実に変わっていくだろう。ASTRO 2025 はその転換点を強く印象づけた学会だった。


