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SBRT後の「がんは本当に死んだ?」をMRIで見る時代|DWI・ADC最新研究

SBRT後の「がんは本当に死んだ?」をMRIで見る時代

CTでは分からない治療効果をDWI・ADCで早期評価する最先端研究

SBRTが急速に普及しています。

肺癌。

肝細胞癌。

骨転移。

前立腺癌。

脊椎転移。

これまでなら数週間から数か月かけて分割照射していた病変に対して、少ない回数で非常に高い線量を集中させることができるようになりました。

しかし、SBRTが高度になればなるほど、別の問題が目立ってきます。

それが、

「照射した腫瘍は、本当に死んだのか?」

という問題です。


CTでは「癌が死んでも」陰影が残る

例えば肺癌です。

SBRTを行うと、腫瘍の周囲には放射線による炎症や線維化が起こります。

その結果、

  • consolidation
  • fibrosis
  • volume change
  • architectural distortion

など、さまざまな画像変化が出現します。

ここで問題になるのが、

癌がなくなってもCT上の陰影が残る

ことです。

逆に、

再発した癌が放射線後変化の中に隠れてしまう

こともあります。

つまりCTは、

「形」を見るのは得意ですが、「その中に生きた癌細胞が残っているか」を直接見ているわけではありません。

SBRT後の肺では、放射線誘発線維化と局所再発の鑑別が現在でも重要な臨床課題です。


FDG-PETなら解決する?

そこで考えられるのが、

FDG-PET/CT

です。

FDG-PETは、腫瘍の糖代謝を評価します。

つまり、

CT=形態

に対して、

FDG-PET=代謝

を見ることができます。

これは非常に強力です。

しかし、FDG-PETにも問題があります。

  • 検査コスト
  • 検査施設の制約
  • 放射線被ばく
  • 検査時間
  • 炎症によるFDG集積

などです。

特にSBRT後は、癌が再発していなくても放射線による炎症でFDGが集積することがあります。

2020年の肺癌SBRT後の研究では、治療後9か月以内のFDG-PETでは偽陽性がみられ、SBRT後の早期PET解釈には注意が必要であることが示されています。9か月を超える時点では、局所再発例でSUVmaxが高くなる傾向が認められました。

つまり、

PETも万能ではありません。

そこで現在注目されているのが、

MRIです。


MRIには「腫瘍の中身」を見る武器がある

MRIにはCTにはないさまざまな撮像法があります。

その中でも、放射線治療後の腫瘍評価で特に注目されているのが、

DWI(diffusion-weighted imaging)

です。

DWIから得られる代表的な定量値が、

ADC(apparent diffusion coefficient)

です。

ADCは、組織内で水分子がどの程度動くかを数値化したものです。

一般的に、細胞密度が高い腫瘍では水分子の動きが制限され、

ADCが低くなる傾向

があります。

一方、放射線治療によって腫瘍細胞が障害されると、

  • 細胞密度の低下
  • 壊死
  • 細胞外スペースの増加

などが起こり、

ADCが上昇する

可能性があります。

ここが非常に面白いところです。


「腫瘍が小さくなる前」を見られる可能性

従来の治療効果判定では、

腫瘍が小さくなったか?

という形態変化が重要でした。

しかし放射線治療では、

放射線照射

細胞障害

細胞死・壊死

組織変化

腫瘍縮小

という時間差があります。

つまり、

癌細胞が死んでも、すぐに腫瘍が小さくなるとは限りません。

そこで、

「小さくなったか」ではなく、「腫瘍の中で何が起こっているか」

を見る。

これがDWI・ADC研究の基本的な考え方です。


肺癌SBRTでADCが注目される理由

肺癌SBRT後のMRI研究では、ADCの変化が治療反応を反映する可能性が報告されています。

例えば、NSCLCに対する放射線治療後のDWI-MRIを検討した研究では、ADCの変化が治療反応評価に有用である可能性が示されました。

また、肺SBRT後の研究では、治療後にADCが上昇することが報告されています。

さらに、SBRT後の局所再発と放射線後変化をMRIで鑑別する研究も進んでいます。

ここで重要なのは、

MRIがCTを完全に置き換える

ということではありません。

CTでは形態を見る。

MRIでは組織の性状を見る。

PETでは代謝を見る。

それぞれの長所を組み合わせる方が合理的です。


肝細胞癌SBRTでも面白い結果

肝細胞癌でも同じ発想が研究されています。

肝癌に対するSBRTでは、

「腫瘍が造影されなくなったか?」

「腫瘍サイズが変化したか?」

といった評価が行われます。

しかし、腫瘍サイズの変化には時間がかかります。

そこで、

DWI・ADCを使って早期の変化を見る

研究が行われています。

最近の前向き研究では、肝細胞癌に対するSBRT後の定量的MRI変化が、早期の腫瘍縮小と関連する可能性が報告されています。

治療前から治療後のADC変化が大きい病変ほど、その後の腫瘍縮小が大きい傾向が認められました。

さらに、ADCの変化とPIVKA-IIの変化にも関連がみられています。

これは、

MRI+腫瘍マーカー

という組み合わせによって治療効果を評価できる可能性を示すものです。

この研究の一例として、2026年に報告された前向き研究では、19患者29病変を対象にSBRT後の定量的MRIと肝機能指標を評価しています。

ここでは、研究グループの一報としてTanakaらの研究も報告されています。

ただし、症例数はまだ限られており、

「ADCが上昇すれば癌が完全に死んだ」と証明されたわけではありません。

ここは非常に重要です。


骨転移ではさらに難しい

骨転移の治療効果判定は、さらに難しい領域です。

なぜなら、

癌細胞が死んでも、骨の形はすぐには変わらない

からです。

CTで見ると、

  • 骨硬化
  • 骨破壊
  • 再石灰化
  • 骨構造変化

などが時間をかけて起こります。

したがって、

「CTで骨が硬くなったから治療成功」

と単純には言えません。

ここでもMRIが注目されています。

特に、

DWI・ADC

によって骨髄内の腫瘍細胞や組織環境の変化を定量的に評価する研究が進んでいます。


骨転移でも「ADCが上がる」という現象

肝細胞癌の骨転移を対象とした前向き研究では、放射線治療後にADCが上昇しました。

さらに、局所進行した病変ではADC変化が乏しく、非進行病変ではADCが大きく上昇するという結果が報告されています。

この研究ではADC測定のobserver agreementも良好でした。

つまり、

「ADCを測れば治療効果を数値として追跡できる可能性がある」

わけです。

これは放射線治療医にとって非常に魅力的です。


SBRTと通常照射ではMRI変化も違う?

さらに興味深い研究があります。

骨転移に対して、

SBRT

通常分割・単回照射

を比較し、

治療後のADC変化を追跡する研究です。

SBRTでは高い線量を限局的に投与するため、

腫瘍組織に起こる変化も異なるのではないか?

という発想です。

2025年のASTROでは、骨転移に対するSBRTと通常照射後のADC変化を比較した研究が発表され、SBRT群でより大きく持続的なADC上昇がみられる可能性が報告されました。

こうした研究の一つとして、TanakaらによるASTRO 2025発表もあります。

「SBRTを照射した腫瘍はMRI上でどのように変化するのか?」

という、非常にシンプルですが重要な問いです。


ASTROで発表される研究も変わってきた

以前の放射線治療研究では、

「何Gy照射したら局所制御率が何%だった」

という研究が中心でした。

もちろん、これは今でも重要です。

しかし最近は、

  • MRI
  • DWI
  • ADC
  • Radiomics
  • PET
  • AI
  • ctDNA

などを組み合わせ、

「なぜ効いたのか?」

「誰に効いたのか?」

「いつ効いたと判断できるのか?」

という研究が増えています。

放射線治療は、

Dose中心の研究から、Biology中心の研究へ

少しずつ進んでいるのです。


MRIの最大のメリットは「繰り返し測れること」

MRIはFDG-PETと比較して、

繰り返し評価しやすい

という大きなメリットがあります。

例えば、

SBRT

1か月後MRI

3か月後MRI

6か月後MRI

というworkflowを組むことができます。

その中で、

ADCがどう変化したか

を追跡する。

これは、

「治療後に一度画像を撮る」

のとは全く違います。

患者ごとの時間的変化を見る、

longitudinal biomarker

として使える可能性があります。


しかしADCにも問題はある

ここで冷静になる必要があります。

ADCは万能ではありません。

測定値は、

  • MRI装置
  • 磁場強度
  • DWI sequence
  • b値
  • ROI設定
  • motion artifact
  • susceptibility
  • ADC mapの作成方法

などによって変わります。

つまり、

施設AのADC 1.2と施設BのADC 1.2が完全に同じ意味を持つとは限りません。

さらに、

ADCが上昇した=癌細胞がすべて死んだ

でもありません。

壊死。

浮腫。

炎症。

細胞外水分。

血流。

さまざまな要素がADCに影響します。

したがって、現在の段階では、

ADCは「腫瘍の生物学的変化を反映する可能性のある画像バイオマーカー」

と考えるのが適切です。


だから「MRIを撮ればいい」ではない

ここが放射線治療医の腕の見せ所です。

重要なのは、

どのMRIを、いつ撮るか。

例えば、

治療前

T1

T2

DWI

ADC

造影MRI

SBRT

1か月後

DWI

ADC

造影

3か月後

DWI

ADC

形態評価

6か月後

MRI+CT

必要に応じてPET

というように、

目的に合わせて画像を組み立てる

必要があります。

これが、

workflowがすべて

ということです。


将来は「治療効果判定」から「治療適応判断」へ

さらに先の未来を考えてみます。

治療前MRIで、

ADC

Radiomics

AI

腫瘍の生物学的特徴を推定。

そしてSBRT。

1か月後MRI。

ADC変化。

AIが治療反応を予測。

必要なら追加治療。

このようなworkflowが実現する可能性があります。

つまり、

「SBRTを照射して、半年後に効いたかどうかを見る」

という治療から、

「治療後早期に反応を評価し、次の治療戦略を考える」

時代です。


PETはなくならない

では、

「MRIがあればPETはいらないのか?」

というと、

もちろん違います。

PETにはPETの強みがあります。

FDG-PETは糖代謝を評価できます。

PSMA PETなら前立腺癌の分子イメージングができます。

つまり、

MRIとPETは競争相手ではありません。

むしろ、

CT+MRI+PET

を組み合わせることで、

  • 形態
  • 細胞環境
  • 血流
  • 代謝
  • 分子情報

を多角的に評価できます。


これからのSBRTは「照射後」が面白い

SBRTは、

照射そのもの

だけを見ていてはいけません。

本当に面白いのは、

照射した後に腫瘍がどう変化するか

です。

CTでは形が残る。

PETでは炎症が邪魔をする。

そこでMRI。

DWI。

ADC。

DCE。

そしてAI。

これらを組み合わせることで、

「腫瘍が小さくなったか」ではなく、「腫瘍の生物学がどう変化したか」

を見ることができる可能性があります。


まとめ

SBRT後の治療効果判定は、まだ完成された領域ではありません。

しかし、研究は確実に進んでいます。

肺癌

CTだけでは放射線後変化と再発の鑑別が難しい。

MRI・DWI・ADCが新しい評価手段として研究されている。

肝細胞癌

腫瘍縮小より前に、

ADCの変化を捉えられる可能性がある。

骨転移

骨硬化や骨破壊の変化を待つのではなく、

骨髄内の腫瘍環境をADCで評価する研究が進んでいる。

そしてASTROなどの国際学会でも、

「放射線を当てた後、腫瘍がどう変化したのか」

を画像バイオマーカーで評価する研究が増えています。

最近の研究の一例として、Tanakaらによる肝細胞癌SBRT後の定量的MRI研究や、ASTRO 2025で発表された骨転移SBRT後のADC研究があります。

ただし、これらはまだ発展途上です。

ADCだけで腫瘍の生死を断定できるわけではありません。

だからこそ、

MRI

×

CT

×

PET

×

腫瘍マーカー

×

AI

をどう組み合わせるかが重要になります。

放射線治療の進歩は、

「何Gy照射できるか」

だけではありません。

これからは、

「照射した結果、腫瘍がどう変化したのかを、どれだけ早く正確に知ることができるか」

が重要になります。

高精度ではなく患者利益。

装置ではなく戦略。

そしてMRIは、単なる画像診断ではなく、

SBRT後の腫瘍生物学を追跡するためのツール

になりつつあります。

理論と臨床は違う。

最後は人間。


参考文献

  • Jagoda P, et al. Diffusion-weighted MRI improves response assessment after definitive radiotherapy in patients with NSCLC. Cancer Imaging. 2021.
  • Timing of FDG-PET SUVmax for diagnosis of local recurrence of NSCLC after SBRT. Cancer Med. 2020.
  • Lee JH, et al. Diffusion-weighted and dynamic contrast-enhanced MRI after radiation therapy for bone metastases. Sci Rep. 2021.
  • Tanaka O, et al. Integration of quantitative MRI and liver function indices to predict early tumor response after SBRT for hepatocellular carcinoma. Clin Transl Radiat Oncol. 2026.
  • Tanaka O, et al. Changes in Apparent Diffusion Coefficient after Radiation Therapy for Bone Metastases: A Comparative Study of SBRT and Conventional RT. ASTRO 2025.
  • Tanaka O, et al. CT-like MR images to assess changes after radiotherapy for bone metastasis: a case report. BJR Case Rep. 2025.

CTA

SBRT後の画像評価は、これから大きく変わる可能性があります。

「CTで陰影が残っているけれど、これは再発なのか?」

「1か月後のADC変化にはどんな意味があるのか?」

「肺・肝臓・骨では、どのMRI sequenceを使うべきなのか?」

こうした疑問は、単なる画像診断ではなく、放射線治療そのもののworkflowを変える研究テーマになってきています。

MRI、DWI、ADC、Radiomics、AIをSBRTとどう組み合わせるか。

これからの放射線治療では、**「照射する技術」だけでなく「照射後をどう評価するか」**がますます重要になっていくでしょう。

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