日米の食道がんに対する治療方法の違い

🇯🇵 日本における治療方針
1. 放射線治療
- 照射線量:
通常は60 Gy / 30回(1日2 Gy)が標準的。
やや高線量を好む傾向があり、切除不能例でも60 Gy程度を照射する施設が多い。 - 照射野(RT field):
**予防的リンパ節領域も含めた広範囲照射(ENI: Elective Nodal Irradiation)**が行われることが多い。
特に頸部や縦隔リンパ節までカバーする傾向にあり、局所制御を重視。
2. 化学放射線療法(CRT)
- 標準レジメン: シスプラチン+5-FU(CF療法)が一般的。
最近では、ドセタキセル+シスプラチン+5-FU(DCF療法)+放射線を併用する臨床試験も注目されている。
3. 手術との関係
- 日本では、手術は化学放射線療法後の救済的または選択的施行とされることもあるが、術前化学療法→手術(いわゆるJCOG9907の流れ)を標準として採用する施設も多い。
🇺🇸 アメリカにおける治療方針
1. 放射線治療
- 照射線量:
術前CRTの場合は41.4〜50.4 Gy / 23〜28回が主流。
根治目的でも50.4 Gy / 28回が標準とされ、高線量(>60 Gy)はむしろ避けられる傾向がある。 - 照射野:
**腫瘍と陽性リンパ節に限定した involved field irradiation (IFI)**が原則。
予防的な広範囲照射(ENI)は基本的に行わず、副作用軽減を重視する。
2. 化学放射線療法(CRT)
- CROSS試験に基づくレジメンが標準:
カペシタビンまたはパクリタキセル+カルボプラチン+RT(41.4 Gy)
→ CRT後、**必ず手術へ(術前CRT)**という一貫したプロトコルが定着。
3. 手術との関係
- 術前CRT → 手術(trimodality therapy)が標準治療。
非手術治療(definitive CRT)は、手術不能や希望しない場合に限られる。
🇯🇵 vs 🇺🇸 違いのまとめ(比較表)
| 項目 | 日本 | アメリカ(米国) |
|---|---|---|
| 放射線線量 | 原則60 Gy / 30回 | 通常50.4 Gy、術前CRTでは41.4 Gy程度 |
| 照射野 | ENI(予防的リンパ節照射)を採用 | IFI(腫瘍+転移リンパ節のみに限定) |
| 化学療法レジメン | CF、DCF(最近注目) | CROSSレジメン(パクリタキセル+カルボ) |
| 手術との関係 | CRT後の選択的/救済的手術も選択肢 | 術前CRT+手術が基本 |
| 非手術治療(definitive CRT) | よく行われる | 限られた症例のみ |
🔍 背景にある考え方の違い
- 日本:
局所制御率を最大限に高めようとする傾向が強く、「高線量+広照射野」を採用しやすい。加えて、非手術治療で完結を目指すケースも少なくない。 - アメリカ:
副作用を抑えてQOLを保つことも重視され、involved fieldと中線量で治療を行い、必ず手術で腫瘍を取り切るという発想が基本。
📌 まとめ
進行期食道がんに対しては、放射線線量・照射範囲・手術の位置づけ・化学療法レジメンのいずれにおいても、日本とアメリカでは哲学の違いが存在します。
- 日本は、放射線を高線量・広範囲に用い、非手術治療で完結する方針も多い。
- アメリカは、低めの線量・限定的照射でCRTを行い、手術を必須とする方針が主流。
今後は、免疫療法(durvalumabなど)の併用や、**個別化放射線治療(AI・ARTの導入)**によって、こうした国際的な治療方針の差異がさらに整理され、真の標準治療が確立されていくと期待されます。


